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事務管理部門の「むだ」
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1 時間はコスト

繁閑調整のための組織の統廃合や、次長や課長補佐など中間管理職の職の廃止(フラット化)、小さい係の統合(グループ制の実施)化など目に見えるムダの改善は容易です。

しかし、仕事のやり方等普段やっていることはあまり疑問を持たないため、改善しようというモチベーションが働かず、だんだん限界が出てきます。

特に事務管理部門というのは、企画立案など頭で考えることが仕事だ、アイデア勝負だと思っていますから、そのむだを取るといっても、なかなか理解してもらえません。

時間に関係なく、コストに関係なく、許される期限まで、十二分に考えることが仕事だとほとんどの人が思っています。

「工場現場なら、時間を短縮する、配置を見直す等、方法を改善するというのはわかるが、事務部門では、企画立案を速くしろというのは間違っている」とほとんどの人が言うと思います。

しかし、期限という中で仕事をしていても、所要時間(リードタイム)という観念はあったのです。

たまたま、きわめてルーズな時間管理だっただけで、もし、1週間という期限を3日といわれれば3日で結論を出しているのです。

つまり、企画立案やアイデア勝負でも、時間管理は可能なのです。実際は、期限管理しかやっていないだけなのです。

そこに欠けていたのは、時間がコストだという認識です。特に、超過勤務手当をきちっと出していない役所の場合は、与えた給与のなかで無制限に働くこととなり、結果として時間管理がルーズになりがちです。

そのため、むだな会議、むだな資料作りなども平気になります。

有限な時間の中で何を優先してやるかという意識はなくなって、時間に関係無く、何でも、全部を、やろうとします。

しかし、これからは、職員が働く時間はコストがかかるという認識に変わらなければなりません。

こういう話をしますと、必ず出るのが、「公務員の場合、給与のために仕事をしているのではない」とか、「超過勤務手当などどうでもよい、時間に縛られずに仕事をしたい」などという言葉です。

この意識、意気込みを否定するものではありません。

しかし、それが杜撰になってどういう結果をもたらしたかといえば、「遅くなったから(電車があるのに)タクシーで帰る」、「公費である食料費で飲み会をやる」等となってしまい、国民から厳しく批判されました。

これは、「相当ただ働きをしているんだから少しくらい使わしてもらってもおかしくない」という意識の裏返しです。

さらには「超過勤務手当ももらわずに長い間一生懸命やってきた。

退職後に高い報酬や高い退職金もらうのがそんなにおかしいか」となってしまいます。これを防ぐには、その時々で支払うべきものはきちっと支払うことです。

職員一人当たりの超過勤務手当が月に100万円もかかるのであれば(実際それくらいやっている月もあるのです。)、仕事のやり方を改善しよう、議会(国会)対応を変えようとか、改善の動きが出てきます。

公務員を雇っている住民・国民からすれば、「膨大な時間待機している議会(国会)対応など改革すればいいじゃないか。

勤務時間の管理もしっかりやって超過勤務手当もしっかり払えばよい。

その代わり、天下りなど不合理な特権は廃止してほしい。

その方がコストは安くなるのではないか。」ということなのです。

企画立案など頭で考える仕事には時間管理はなじまない、とか、公務は時間やコストに関係なく十二分に考える必要があるという考え方、組織風土は、民間では疾うの昔に廃れています。

結局、役所だけの論理で通用してきた仕事のやり方を今一度見直しして、改善しなければならない時期に来たということです。

2 行政作用のむだ取りの模索

これから求められるのは、目に見えるムダを取ることだけではなく、目に視えないむだまで取ることです。

事務管理部門の仕事でも、工夫次第で、機械化したり、集中化したり、まとめて外注したり、さらには省略したり、廃止したりできるのです。

事務管理部門でも、見えるムダ取りから、視えないむだ取りに進めていく必要があります。

目に見えるムダの改善の中で、日常普通にやっている仕事についても、本当に必要なものかどうか、この会議は必要かどうか、この説明資料は必要かどうか等職員は考えるようになっていきます。

しかし、それでも、現場でのカイゼン等の経験者の少ない事務管理部門のカイゼンは困難なものです。そのようなときに、衝撃を受けたのは、私どもが経営品質の指導を受けていた先生方の一人で、「人と経営研究所」の大久保寛司氏の著作の中の一節でした。

「IBMでは、平成5年から7年にかけて、北城社長自ら率先垂範し、本社人員を3000人から400人に削減、その多くを現場のサービス部門へシフトしました。」というものでした。

北城さんの強いリーダーシップの下、顧客本位という基本理念から、現場重視、顧客満足の強化を目指し、現場のサービス部門の強化にシフトしたということでした。間接部門の大胆な見直しです。

実は、 行政の業務革新(イノベーション)の真の狙いは、ムダ取りではないのです。ムダ取りは手段に過ぎません。

我々の真の目的は、絶えずシステムを再構築していこうとする行政に変えることなのです。

ピラミッド型のヒエラルキーの中間層を省いて簡素化し、その人員を現場に向けることや、現場に知悉した人財を政策立案過程に投入することなどにより、現場に立脚した政策を強化することです。

極端に言えば、ハンコつきをしている中間層は、最低限の管理監督ができればいくら少なくてもいいのです。その人的資源を再配置し、活用することが重要なのです。

そのために、事務管理部門のムダ、むだを取って、最少にしなくてはなりません。しかし、役所の仕事の仕方に疑問を持たない者だけではどうしても限界があります。そのため前述したようにトヨタ生産方式(TPS)の発想を行政に生かせないか模索したのです。

単なるリストラではなく、自分たちでムダを見つけ改善していくという着想こそが、肥大化した行政の業務革新には必要だと考えたからです。

大幅な事務管理部門の縮小は、事務の棚卸しをし、

①負荷の谷(業務量の少ない時点)で人員を設定し、車作り以外のことはやめる、

②稼動維持のためにバックアップ体制を構築するなど環境整備に配慮し、

③危機感、使命感の共有化など徹底した理解の促進を図った、ということでした。

つまり、何か特別な方法があるのではなく、一つひとつの仕事について、本当に必要なのか、この方法がベストなのか、ということを何度も何度も突き詰めていけば、ムダ取りも、むだ取りもできるということでした。

工場だからできる、生産現場だからムダ取りができる、ということではないのです。

ムダが見えないと思い込んでいた事務管理部門においても、やっている仕事の大半は、実は資料作り、起案、上司への説明、打ち合わせ、会議、それらの準備等なのです。

企画立案等頭で考える仕事には、むだ取りといった発想はなじまない、できないという甘えた発想は吹っ飛び、事務管理部門の会議、資料作り、決裁過程等あらゆるものが見直せると考えるようになりました。

むしろ、そういう企画立案作用だからこそ、そこにカイゼンをし続ける発想が必要だと考えるようになりました。

目に見えるムダから、さらに目に診えないむだまで、本来の仕事以外はやらないと決めたら、相当の量のカイゼンができるのではないかと思いはじめました。

3 業務プロセスの改善

そこで、改めて、業務プロセスのカイゼンに取り組みました。

それまで日本経営品質賞のセルフアセスメント基準によってプロセス改善をしてきていました。

セルフアセスメントで、組織の実態を把握し、組織の弱みについて気づきが生まれていますので、まず、取り組んだのは、期限管理から時間管理への意識改革と基幹システム、支援システムにおけるムダを取ろうというプロセス改善です。

たとえば、地方出先機関の職員の場合、県庁での情報伝達会議やヒアリングが多く、連日膨大な時間が取られ、県庁での会議から帰ってから日常業務を行っている実態がありました。そこで、情報伝達はフアックスやメールで行うことを原則とし、ヒアリングも各課がバラバラに行うのでなく、部単位、全庁単位でまとめて同じ日に設定するようにしました。

その結果、県庁に呼ばれる機会が減って出先機関の負担は大いに減りました。

しかし、「ムダ」取りのレベルから「むだ」取りのレベルに移っていかなければなりません。

まず、旅費の事務処理をモデルに、フローチャートを作成し、プロセス分析を行いました。その結果は極めて大きなものでした。

間接部門の業務を18種類に分類した結果、価値を生む仕事は、(何々をしなければならない)という判断(起案)と(何々をやろうという)承認(決裁)の二つだけであるとし、あとの16種類の仕事は、機械化するなり外注化するなりして極力人手をかけないことが重要だというものでした。

その根幹をなす考え方は、工程の「むだ」を取るということ。即ち「仕事を減らす」ということです。これまでの行政改革や民間におけるリストラというのは、そのほとんどが仕事の内容を変えずに組織や人を減らそうとするものです。

その結果は、総コストは抑えられても職場の人間関係、技術の伝承など失われたものも少なくないといわれています。

100の仕事を10人でやっていたら一人当たり10ですが、これを7人でやるとなったら一人当たり15弱です。

一人当たり1.5倍もの労働強化になってしまいます。このようなやり方を改革といっても、職員、社員、誰もが賛同して取り組んでくれるとは思えません。

畢竟、改革担当や管理職だけの改革になりす。

抵抗されると権限を集中して突破しようとします。

その結果、優秀な職員、幹部はついていかなくなり、ただ黙々と追従する職員、社員だけが残ってしまい、生産性は落ちます。

同じ人が、同じやり方をしながら、10を15にあげるというのは、精神論以外の何者でもありません。

必要なのは、100という仕事のむだをとって、時間なりコストなりを70以下にすることなのです。

70にすれば7人でやっても一人当たり10ですから変わりませんが、コストは10分の7になります。

やらなければならないのは、仕事を減らすこと、プロセスを分析してむだを剥ぐことなのです。

いまどきの役所、企業で、明日から1.5倍仕事をしろといって、できる職場があるでしょうか。

精神論ではなく、職員、社員が全員、むだはないかと常に考え考え、むだを取っていく、それが求められているのです。

行政の場合、1.5倍仕事をするというのは無理ですが、逆に仕事や組織、人員を3分の2にするのは可能だと思います。

行政においては、これまで定数を減らすという行政改革はありましたが、真の意味での行政改革はあまり行われていません。

戦後、道路を造る、港湾を整備する、さらには体育館を作るなど産業基盤の整備からはじまって社会資本の整備を進めてきたわけですが、その間担当する行政組織も膨れ上がりました。

しかし、そういう整備がほぼ終わっても膨れ上がった組織を元に戻していないのです。住宅が必要なときには住宅公団を作り、炭鉱離職者を就業させるために雇用促進事業団を作りましたが、その役目が終わってもまだ名称を変え、生きながらえています。

これをそのままにしておいて、高齢社会が到来したので老人福祉関係を充実させるとなると、新しい行政需要のために組織が必要となり行政は肥大化します。

そういうムダは外から見えます。

行政需要が拡大した当時に肥大化した組織をまずたたまなければならないのですが、それすらまだやっていません。

必要なのは、役割を終えたものは当然にたたむ。

それにとどまることなく、新たな組織の中でも、業務プロセスを見直してむだを取っていくということです。

岩手県では、平成15年から17年にかけて、こういう改革に着手し、超過勤務時間の圧縮などに一定の効果を挙げました。

事務管理部門の仕事に時間管理を持ち込むという試みは、行政では初めての試みだと思います。

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