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予算査定、議会対応の見直し
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1 予算編成の課題

予算の編成の仕方は、各自治体によって少しずつ違いはあると思いますが、概ね、夏から秋口にかけて各課各部局から予算要求があって、それを財政局、総務部、財政課等が査定し、部局長調整、首長調整を経て決定される流れで行われていると思います。

その問題点、課題は、次のようなものです。

1) 予算編成に時間がかかりすぎること。

2) 当該年度の結果が出ない前に翌年度予算の編成が始まること。

   即ち現状を踏まえて評価したうえでどうするかではなく、予算のために予算要求しているこ

3) 予算を査定する財政主査が、施策の内容について知らないこと。

4) 資料や評価に基づく査定ではないこと。

5) 予算査定の考え方が明確ではないこと。

  これが、最大の課題削ったものが公表されていないこと。

6) 予算を執行した結果について評価されていないこと。

    その問題点、課題は、次のようなものです。

2 政策の選択決定の在り方

地方自治体における予算査定は、財務管理のために行われるものなのか、予算のムダをチェックする財政規律の維持のためなのか、それとも政策判断を行うためのものなのか、その位置づけがはっきりしていません。

財務管理のためであれば、政策の方針、優先順位が決まってから財源、予算規模等を話し合えばよく、財政主査の査定は不要です。

また、財政規律の維持の場合も、政策がきまってから執行方法の効率性やムダ削減のために査定すればよいのです。

政策を判断するためなら、財政担当は必要ありません。首長、事業担当部局長、政策担当部局長が行えばいいはずです。

財政主査が政策判断するというなら、部局の政策を判断できる能力、知識、関係する住民等の情報等をもっていなければなりません。

しかし、実際は、農業なり商工業なりの行政経験のない財政主査が、農業政策や商工業政策を査定しているのです。

施策を査定するといって、担当部局担当課から、毎日膨大な資料に基づいて、ヒアリングと称して説明を受けています。

担当部局からすれば、知識や経験のない財政主査に説明して教えてあげて、その上でその施策の必要性を判断してもらう必要はどこにあるのか疑問を持ちます。

担当部局には知識、能力、判断力がなくて、一方財政主査にはすべてに段違いの能力がある、そういう場合だけに成り立つ話です。

これは、もともとは、律令国家以来の上意下達の仕組みの延長なのです。

下々からこういう予算をいただけないかと上奏し、下位の役人が、君側の重臣に対して施策をお願いした仕組みの名残です。

地方自治が始まったころは、事業部局に人材がおらず、総務が仕切らなくてはやれない時代もあったかもしれませんが、行政ニーズが複雑多岐化した今日では、事業の内容、方法まで詳細に検討しなければ住民のニーズに応えることができなくなっています。

そういう複雑化専門化した現代行政においては、担当部局が最も精通しているのです。

財政や総務などの部門は、事業部門の政策に通じていませんし、住民の声にも最も遠い存在です。財布を握っているから、声がかけられるだけであって、予算が決まってしまえば役割は終わるのです。

それゆえ、まず政策判断が優先されるべきです。

政策として実施するかどうか議論し、実施すると決めた場合どの程度の予算と期間で行うか財務面の調整をします。

そのうえで実施方法について効率性やムダなど財政規律上のチェックをします。

これがあるべき予算の決め方と思います。

どういう政策を実施するかについては、まず、住民から選ばれた首長がやりたい政策について事業部局に立案を指示して動き出す場合と、事業部局が政策の必要性を首長に訴え政策化する場合とがあると思います。

前者の場合、指示された事業部局の政策案を三役、政策担当部局の長などが議論して決定し、その後に財務面、財政規律面からのチェックを経て政策となります。

後者の場合、事業の必要性の面だけをどうしても主張するのが事業部局です。

内部管理だけやっている事務部門に比べ、住民に多く接し住民の声を聞いていますから、机の上で査定している案よりはより住民ニーズを反映した内容になっていることが多いのです。

しかし、事業の必要性等政策の判断は、第1義的に首長や副首長などの三役といわれる人々が決定すべきものです。事業部局の主張か、住民の要求かを判断できるのは、住民と日ごろ接しているこれらの人々です。

政策の選択決定は、住民から選ばれた首長や政策担当が行うべきものであって、その方法等について財務管理、財政規律の維持からのチェックは第2義的なものであるとはっきり区別して認識しておかなければなりません。

3 議会対応も、もう変えなくっちゃ!

多くの自治体で、今、行財政改革に取り組んでいます。

首長選挙では、無駄な公共事業はないか(事業の棚卸し)、職員の給与は高くないか、工事の落札率が高すぎないか等争点になっており、見直しの波は高まっています。

一方、議会の改革は議会自らの判断で行うべきものとするため、議会によって取組みには温度差があります。

しかし、議会に対しても、住民団体等は、政務調査費や旅費、報酬、海外視察費など見直しを求めています。

こうした中で、執行部(立法部門である議会に対し、執行する側の行政部門全体をいう。以下同じ。)では、議会対策に相当な時間を割かれています。

議会対策の改革は、議会がらみのため十分に行われているとはいえません。

執行部では、議会開会中は議員の質問の把握、答弁の検討、答弁の作成と夜遅くまで仕事が続きます。議員の質問全文を手に入れて検討するところもあれば要旨だけのところもあるでしょうし、答弁の作成も一字一句やるところもあれば、要旨だけ作成するところもあると思います。

議会対応のための職員も、議会担当課から各部局の議会担当課、さらに質問が出ている担当課まで、多くの課の職員が対応します。

これには膨大な時間とコストがかかっています。

無論、住民の代表である議員が年に数回執行部の取組みをチェックする重要な機会ですから、2元代表制の役割を果たすその意義は大きく、その役割を否定するものでは毛頭ありません。

しかし、長い間に議会と執行部の関係も形式化していないか、マンネリ化していないか、一度チェックしてムダと思えるものはカイゼンしてもよいと思われます。

議会がらみのことは、執行部だけでは難しい問題もありますが、全庁あげて行財政改革に取り組んでいるときに、議会関係は聖域として、アンタッチャブルにしているところはないでしょうか。

4 業務革新と議会対応

議会対応は、議会の意思や伝統(先例)などがあるため、執行部だけで決められない問題もあります。

しかし、執行部だけで改善できるものも少なくありません。

岩手県では、平成15年からの4年間の改革期間において、業務プロセスを短縮することを掲げ、超過勤務時間の短縮に取り組んだ話を先に述べました。そこでは、取り組まなければならないのは日中の業務量を減らすことだと述べました。議会対応でも、執行部としてやれることはいっぱいあるのです。前述したとおり、

① 手待ちのムダ

② 動作のムダ

③ つくり過ぎのムダ

④ 在庫のムダ

⑤ 運搬のムダ

⑥ 加工のムダを取ることです。

①手待ちのムダ、ですが、議会対応の場合、質問が出てくるのを待つ時間、上司、首長などの答弁検討を待つ時間など、段取りと工夫によって短縮できます。

まず、答弁検討のために残る職員を制限しました。直接の担当者、係長といったラインの職員に限定し、他の職員は、原則帰すということです。

以前は、議会答弁検討があれば、ほとんどの課で役職者はもちろん、担当以外の平職員まで残っていることが多かったのです。

何かあったときに、残っている人数が多ければ手伝ってもらえるため、安心感はあるのですが、実際は残っていても仕事はありません。

あいつは先に帰ったと言われないためお付き合いで残っていると言っても過言ではないでしょう。

次に、議員からの質問が出た場合、素案とか未定稿とか、確定稿が出るまでに何度か原稿が配られます。さらに、確定稿に修正がある場合、最終稿というようにまた配られます。議員さんは、何度でもつめて修正していただいていいのですが、執行部としては質問の要旨が伝わったらもう十分であって、後は確定稿さえあればよいわけです。しかし、未定稿に対して答弁原稿を作り、未定稿の表現が少し変わるとまた作り直し、確定稿が出るまでに何度か答弁原稿作りをする等は無駄な作業です。まさに②の動作のムダ、③のつくり過ぎのムダ、なのです。確定稿が出たら答弁検討をするのがもっとも無駄がないので、確定稿が出るまで質問原稿を配布しないようにと言う幹部もいましたが、待てない幹部も多く、質問案が確定しない段階から答弁検討したり、一字一句変わるたびにやり直す幹部もいました。多分、公務員の中ではこういうやり方を肯定する方が多いのではないかと思います。一生懸命やっている、よりよいものを作ろうとしている、と。

しかし、注文がきまらないうちに製品を作って、注文内容が変わるたびに作り直す、そういう会社ってあるでしょうか。

多くの場合手戻りが発生します。

一生懸命やったというのは、コストがかからなければという前提で評価されるのです。何回か作って、慣れたから最後は楽に作ることができましたといっても、それを誰が評価するでしょうか。

民間の人から見たら、1回で済むものを2回も3回もやって、2倍、3倍のコストをかけて何をやっているのだというと思います。

つまり、役所は、始めに申し上げたように、時間管理がされていません。

また、超過勤務手当もきちっと支払われていないところもあるでしょうから、職員の労力と時間をかけることがコストだ、住民に負担をかけることだという認識が希薄なのです。

この改革は、幹部の意識一つでできることです。

岩手県の場合も、国からきた部長が、夜遅くまで議会の答弁検討を行うという長年の習慣に風穴を開けました。

答弁検討は、日中の勤務時間のうちに終えるか、遅くても7時ころには終わってしまうため、職員から圧倒的な支持を得ました。

その噂が庁内中に広がり、夜中までやっている部局長には、遅い、わかっていない、まとめられない、無能といった評価がささやかれるようになっていきました。

それまでは、下から上がってくる答弁案を何度も添削するというやり方が多かったのですが、若手の部局長の中には、素案はもらうものの、後は自分で手を入れて完成させ、1、2回の答弁検討で済ます部局長も出てきて評判になりました。

それまでの、膨大な時間をかけて深夜まで答弁検討をして、それから酒を飲んで帰るといったスタイルは、経営品質による意識改革の進んだ職員からは支持されなくなっていったのです。

競って、簡素化、スピードアップを図るようになり、平成17年当時では、議会の答弁検討で夜遅くまでかかっている部局はほとんどなくなりました。多分、その時期までに、部下の原稿ではなく、自分の言葉で答弁できる部局長がそろったということではないかと思います。

次に、どこの役所にも、議会資料というものがあると思います。

内容は業務の概要と想定質問からなっています。

前者は、現在課が行っている業務の状況をまとめたものであり、後者はそれについて何を質問してくるか想定したものです。

想定質問があれば、それをもとに答弁するかといえばそうではありません。

議会答弁は、また新たに作成します。

それゆえ、作っておく必要性はあまりないのです。しかし、役所では想定質問等を作って準備していることが評価されます。

注文を受けて作る請負業が、毎回、試作品を作っているようなものです。

コスト、時間は、倍かかります。

ましてや、その想定が全部外れることも多いのです。

質問が出ないときは、全部売れなかった在庫の山のようなものです。

これは、④の在庫のムダです。

このように、議会がらみといえども、執行部独自で改革できるものは数多くあります。

まず執行部自ら改革に取り組み、次に議会に対しても、長年の先例等で、時間、コストがかかるものについて、検討をお願いしていくべきだと思います。

5 目指すもの

行政機関の業務革新(イノベーション)によって目指すものは何でしょうか。

国や地方自治体の一部では、厳しい財政状況から削減すること自体を目的にしなければならないところがあると思います。

また、削減した人員、予算等を新たな政策等に活用したいと考えるところもあると思います。

さらに、削減した後のスリム化した人員、予算で政策等を絶えず見直し続け、充実させていく、そんな行政を目指すところもあると思います

。行政機関の業務革新の目指すところは、まさにそこにあります。

あらゆる「ムダ」、「むだ」を取り、全体の仕組みを見直し、システムを再構築する、それが目指すものです。

そして、そういう徹底したムダ取り、むだ取り、無駄取りを行って、システムを再構築し、そういう手法によって行政が目指すべきものは何でしょうか。

それは、産業振興や試験研究など未来を拓く可能性のある分野に人的資源を投入することです。

特に、地方の産業振興は今や急務です。

かつては工業再配置政策によって地方でも工業団地ができ、雇用が確保され、地域の振興が図られました。

しかし、今や工場は海外に移り、地方の雇用を支える産業は大きく衰退しています。

地方をどうやって維持していくか、農業や水産業をはじめとして、産業をいかに育てていくか、それが大きな課題となっています。

また、新しい分野の開拓が必要です。

試験研究機関等の職員、農業改良普及員、水産改良普及員等を増やせば、技術開発や新しい栽培方法や新品種の開発などによって、国民・住民に新しい価値を提供してくれる可能性があります。

国民・住民を豊かにしてくれるかもしれません。

その結果、国も地方も豊かになります。

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