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福岡 暉馬の
行政の業務革新のススメ
道路建設など国の公共事業の費用負担を地方自治体に求める直轄事業負担金について、全国知事会は廃止を要請し、政府は軽減を検討するとしている。
私は、行政改革の視点から課題を指摘したい。
まず、国の事業計画策定に住民や自治体が関与していないこと、地方が相当な負担金を出すのに詳細が示されず、便益、効率について地方議会のチェックが働かないことが問題である。
次に、岩手県では公共事業費がこの10年で3割に減っているのに直轄事業負担金はあまり変わっていない。
岩手県大船渡市では、三陸縦貫道の一部ができたので、国は歩道の狭い国道を4車線から2車線に減らす検討をするという。
造っては壊す、壊しては造るでは、仕事は永遠に続くことにならないか。
地方にどういうものを造るかは、受益と負担を実感する住民や地方が決めた方が効率的であろう。
国の出先機関が自らの基準で施設を造り、その負担を自治体に請求する現行の制度では、住民が求めるものではなく、出先機関が必要と考える施設を造りかねない。
国は、国道の維持、管理を地方に任せ、高速道路の整備といった国土の均衡ある発展のための社会基盤の整備を急ぐべきであり、その企画、立案に絞るべきだ。
中国地方では中国道、山陽道と縦貫する自動車道が2本あるが、東北では1本だ。
これでは、社会資本の整備が進んだ地域と遅れている地域の格差はますます拡大しかねない。
さらに、直轄事業負担金の問題を負担金の軽減や事前協議制の導入という次元で終わらせるべきではない。国と都道府県で重複している組織を大胆に整理することだ。
なぜ道路建設や管理に国の国道事務所と県の土木事務所が必要なのか。
私が調べたところでは、岩手県の道路維持の職員は約100人で約4200㌔を管理している。
1人当たり約40㌔だ。国土交通省の出先は県内に計11カ所ある。
職員約70人で約550㌔を管理している。
1人当たり約8㌔だ。単純には比較できないが、効率性に疑問が残る。
国が、これらの人員、予算と権限を一括して県に移譲すれば、より効率的になるし、議会による事業効果のチェックも強化される。
国の出先機関は、地方と二重行政になっていない分野と全国的な社会基盤整備の企画、立案に絞り、21万人の職員を大幅に削減すべきだ。
今、国の財政も極めて厳しい状況にある。
直轄事業負担金問題は、単に地方が負担するか、国が負担するかの問題ではなく、肥大化した行政組織の無駄をどう省くのかという問題だ。
国の出先機関改革の工程表には、出先機関の統廃合や人員削減目標が盛り込まれていない。
与野党ともに総選挙に向けて、方向性を明確に打ち出すべきである。
岩手県労働委員会事務局長。
01~04年、岩手県行政システム改革監、人事課長として行政改革に携わる。
政府は教育再生会議の提言などを受け、教育職員免許法など教育関連3法を改正した。
再生会議などの提言の背景には、学校で基礎的な学力や生活習慣、社会規範などをもっとしっかり教えてほしいという国民の強い不満があった。
しかし、法改正は果たして有効な解決策になるか。
いくつかの問題点を指摘したい。
まず、教育職員免許法の改正では、教員の資質向上を掲げ、30時間以上の講習を受講し、教員免許を更新することで資質と能力を磨くとしているが、現状が、十分に認識されているのであろうか。
指導力不足教員は(1)基本的な知識、学力が弱い(2)授業力が弱い(3)学級経営、生徒指導力が弱い(4)児童生徒、保護者とコミュニケーションがうまく取れない、などに分類できる。
(1)についていえば、教員採用試験の倍率が本県など東北では10~20倍前後であり、基本的な知識学力が弱い教員はそもそも採用されない。
仮に学力不足の教員がいるとすれば採用の問題であり、教育委員会の面接など採用の仕組みの抜本的改善や人材確保策が必要なのである。
次に(2)の授業力については、これまで多くの教育委員会が力を注いできた。
しかし、その方策が実は先生方を授業研究に駆り立て、教室から引き離しているのである。
授業力がどんなにすばらしくても全員が一度の授業で理解できるわけではない。
今求められているのは成績下位層に対する対応、すなわち遅れている子供に対する対策なのだ。
予備校や塾が充実している都市部と、地方では補充力に格差が出る。
本県でも地域おさらい教室を設け、保護者や教員OBなどが放課後や長期休業期間中に児童生徒の補充学習に取り組んでいる。
ただ、教員は授業が終わった後も校務があり、クラブ指導もある。
さらに問題行動があれば生徒指導もある。
補充学習はままならず、免許更新のための長時間の講習が加われば長期休業中の補充のための時間さえ確保が難しくなる。
これまで実施されてきた10年目の研修など既存のものをできるだけ活用し、これ以上、学校現場の多忙化を防止すべきだ。
さらに、今、不適格教員などと問題とされるのは実は(3)、(4)の場合、特に、保護者、児童生徒とコミュニケーションが取れない場合が多いのである。
保護者もいろいろである。
特に子育てなどの経験のない若い教員がどうすればうまく対話できるようになるか。
コーチング、コミュニケーション技術などについて教員養成課程で最重要課題の一つとして教える必要がある。
今やるべきことは、教員を生徒から乖離(かい・り)させることではなく、学校で一回の授業で理解できない子供に対し、補充をする先生や、生活習慣や社会規範を身につけさせるための生徒指導などの先生の配置を行うことである。
早寝早起き朝ごはん、といった生活習慣の確立が、学習にも効果が上がっているといわれており、家庭や地域を巻き込んだ生活習慣の改善や社会規範の徹底に学校が取り組めるような具体的な施策が求められているのである。
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