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業務革新(2)
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1 繁忙期に合わせた人員

具体的な改革の取組みについて、考えてみましょう。

役所の定数は、どういう考え方で配置されているのでしょうか。

その定数を減らさなければならないとき、皆さんならどうしますか。

各課に一人減らしてもらえないか、と相談しては断られる。

先輩課長には怒られ、後輩には丁重に反抗される。

どうすりゃいいんだ、と頭を抱え込んでしまう。

そんな光景が浮かびます。でも、もともと10人でやっていた仕事を8人でやるとか、5人でやっていた仕事を4人でやるというのは難しいのです。

ただ減らしてくれと言うのは単なる人減らしのリストラ!職員が納得してついてきてくれるでしょうか。

結局、減らす必要がある所、ではなく、減らしても文句を言われない所、になるのではないでしょうか。

それは、ある意味では合理的なのかもしれません。

暇そうに見える所でも、季節、時期によっては忙しいから人を減らされたら困るといわれると思います。

役所は繁忙期をこなせるように組織体制を作っていますから、定数を減らすというのは繁忙期をこなせなくなるということになり、「じゃ、忙しい時にどうするんだ」という抵抗になります。

すべての職場から抵抗を受けるとしたら、その抵抗が弱いところを狙うしかありません。

役所の場合、職員一人当たりの利益といった物差しがありません。

民間のように利益やコストを比較してここを減らすというやり方ができないのです。

職員が納得できるような指標を示さずに人員を減らそうとしたら、力づくでやるか、あきらめるかしかないのです。

役所の組織定数についての考え方は、年間の業務量(業務処理時間)が1人量(8h×240d)を超えるかどうかですが、実際は、最大限忙しい年度末等にその職場の業務をこなせるかどうかです。

そういう前提でできていますから、繁忙期に対応できる最大の員数を抱えているので、繁忙期以外は余裕がある体制になっています。

年間の業務量を月ごとに縦の棒線グラフにし、それに必要な人員を横の折線グラフで表すと、本来、棒線グラフの各最頂部と折線グラフ各点が一致していればムダがないことになりますが、役所の人員は一定の場合がほとんどですので、棒線グラフの大小にかかわらず、人員を表す折線グラフは実は折れずに業務量が最大の時の最頂部を横に走っています。

組織によっては業務量の最大時よりかなり上を走っているかもしれません。相当余裕がある時期があるということです。

そして、これまで役所には、暇なときはよそに行って手伝うといった文化はありませんでした。

名目は組織の権限と責任を明確にするためとなっていますが、要はよそが忙しくても手伝う気がない、手伝っても一銭の得にもならない、下手に手伝って失敗でもしたら損だ、ということです。

税を負担している住民から見たら、ある課が夜遅くまで残業しているときに隣の課では日中も暇そうに本などを読んでいる、という状況であれば、なぜ暇な課の職員に多忙な課の職員を手伝わせないのかと疑問だと思います。

民間の会社ならそのコストを減らすことが利益の拡大につながりますから忙しいところに人を回すでしょうが、役所にはそういう意識はほとんどありませんでした。

2 見て見ぬふり、を許すかーラテラルサービス 

そうすると、まずやることは、忙しいところと暇なところの調整をやることです。まず、第1に、組織はそのままでも、お互い忙しいときに人が行ったり来たり出来る仕組みを作ることです。

これを岩手県ではラテラルサービスと言っていました。課では課長の権限で、各係間等で忙しい係に他の係員を動かせる仕組みです。

部では部長の権限で、各課間で職員を動かせる仕組みです。

こういう仕組みを入れると、これまで係ごとに独立していた仕事のやり方が変わるだけではなく、職員の意識が変わります。

もともと、どこの企業でも組織が分化する前は、社員は何でもやっていたと思います。営業に行って帰ってきたら経理をやって、と何でもやっていたはずです。

それが、段々に会社が大きくなって組織が分化してくると、自分の属する組織の仕事だけが自分の仕事だと思うようになって、自分の組織の分担と書かれた仕事以外の仕事は私の仕事ではないという社員が出始め、他の係や他の課の仕事は自分の仕事ではないといい、係際、課際の仕事にも拒絶を示すようになります。

いわく「うちの仕事じゃない」と。

 

しかし、ラテラルサービスをやれば、そういう職員の意識を大きく変えることが出来ます。

さらに、今特にやることがないから何か手伝いましょうかという職員も出てきます。

手伝ってもらった職員は、次には閑散期に相手にお手伝いしましょうと行くようになります。

自分に与えられた最低限の仕事だけやるという「頼まれ仕事」の職員から、できるだけ仕事をやろうという職員が育つのです。

もともと公務員になろうという人は、人の役に立ちたい、世の中の役に立ちたいという気持ちの強い人が多いわけですから、公務員になった頃の初心に戻るだけなのです。

3 繁閑調整をしているか

仕事の忙しさは、春から秋にかけて忙しいところもあれば、秋から春にかけて忙しいところなど、所属ごとに時期が違います。

こういう季節によって繁閑があるのが役所では多いのです。

これをそのままにしていては役所の生産性は上がりません。

こういう季節ごとの繁閑の調整に取り組む必要性があります。

例えば、春から秋にかけて忙しい組織と、秋から春にかけて忙しい組織を統合できないか検討したことがありますか。

岩手県では、平成15年度人事課に職員の研修を担当する能力開発主査という組織がありました。5人です。

ここは新採用職員の研修や新しく役職に昇任した職員の研修、職員の能力開発のための研修を担当しますから、春から秋にかけて多忙です。

一方、職員の人事異動や懲戒処分などを担当する人事係は7人の係でした。

ここは定期人事異動を担当しますから、秋から春にかけて忙しいところです。逆に春から秋にかけてはそれほど忙しいわけではありません。

そこで、繁閑調整を試みて、平成16年度この二つの組織を一体化しました。背景には、人事異動そのものを人財育成という視点で見直すということがありました。

平成15年当時12人でやっていましたが、少しずつ減らして平成20年度では8人でやっています。3分の2になったということです。

無論、忙しければ、他の係からもラテラルサービスで支援してもらえることもありますが、繁閑調整の試みの一事例です。

役所では、これまで、決まった組織で決まった時間だけ仕事をするというのが常識でした。

やることがあまりなくて暇でも、他課を手伝うとか、これを変えなければという発想は一部の若い人を除いてはほとんどありませんでした

「改善しようとしない体質」とでもいうべき組織風土です。

こうした中にあって、平成16年6月に、県の部課長研修の講師として、日本郵政の高橋副総裁に御講演をお願いしました。

そのときに、郵便物をポストから回収してくるのは午前中から午後までと決めてやっていては、その時間に大量の郵便物を回収するために多くの人員が必要になってくる。

一番交通が混雑する時間帯に回収するのは効率も悪い。

夜や早朝の回収を組み合わせると人員は半分以下で済むという話をされました。

無論、働く側からは日中だけの勤務の方が楽ですし、生活サイクルとしても幸せです。しかし、それで採算があわなければ創意工夫が求められます。

実際2交代勤務の職場はありますし、コンビニを持ち出すまでもなく、小売業やサービス業は9時から17時というようになっていません。

お客さんの動きにあわせて開閉店しています。

私たち公務員は、知らず知らずのうちに、朝の9時から17時頃まで8時間労動といったことが常識化して、効率とか生産性とか考えなくなったのかもしれないと思いました。会社が小さいときは、お茶くみから掃除まで何でもやったと思います。

手の空いている人がやれることをやったはずなんです。

今でも小さい村役場に行けば、やはり何でもやっています。

なぜ、そういう意識を喪失したのか。

組織が大きくなり分化していった過程で、次第に自分の組織の仕事をやればよいという意識になり、やがてそれ以外は他の係、他の課の仕事だからやらなくてよいという意識になったからではないでしょうか。

住民から出てくる全部が役所に与えられた仕事であって、内部でそれを分けているに過ぎないということが見えなくなったということだと思います。

それは、役所、民間を問わず、大きな組織に見られる共通した現象であって、まさに組織病なのです。

それゆえ、職員には、他の係の仕事もすべてが自分たちの仕事、終わったら他の仕事を手伝えないか、遊んでいるときに給料は出ていない、といい続ける必要があります。

4 あまり活用されていないポストはどこか

行政改革の特徴として、廃止、統合といった組織的な検討は一生懸命やるのですが、仕事のやり方が効率的かといった行政作用の検討はあまり行われていません。

そういう視点で各組織の作用をチェックすると、係長は係をまとめ、課長は課を統括し、部長は部内各課を指揮し、相応の仕事をしなければなりませんが、課長補佐はどうでしょうか。

次長はどうでしょうか。課長や部長が不在のときに課長補佐や次長はその機能を代替し、また課長、部長が頭を悩ましたときにそれを補佐し助言することとなっていますが、実際はどうでしょう。

係で協議してA案で行こうとしたら課長補佐からB案の方がよいといわれ、B案にしたら課長からA案の方が優れているといわれたというような経験はありませんか。

同様に、次長協議したらB案となって書き換えたら部長協議でA案に決まった。

いつも二重に仕事をさせられるとか、次長と部長の関係がどうもしっくりいかないため仕事がやりにくいとか、そういう経験は少なからずあると思います。

課長補佐とか次長とか、決裁権を持たずに部下を指揮監督する立場の職は難しい立場です。部下を指揮監督してそれが上司から修正される可能性もあり、一方で判断せずに上司に任せると、上司を補佐する立場なのにチェックしてこないといわれます。

組織の上下・縦の関係の中で、課長補佐、次長は、今のままで十分活用されているのか検討する必要があります。

また、役所の各課では、2ないし3の係ごとに課長補佐が置かれていると思いますが、担当する各係の業務量から、課長補佐の数、権限を見直す必要はないでしょうか。

課長補佐は、課長のように課の顔として飛び回る必要もなく、課の責任者として課の業務全般の判断をして決裁をしなければならないわけでもありません。

部下の相談にあずかり、上司に何かあったときの代替としての役割だけでは一つの課に一人でも時間的には余裕があると思います。

平均的に考えれば、役付職員の中で、最も責任が軽く時間に余裕があるのがこの課長補佐だと思います。

そのため岩手県では、課長補佐を担当課長とし、大幅に決裁権を与え、役割を拡大し、一方で課長補佐の数を大幅に減らしました。

課長は総括課長として、担当課長に権限を委譲したもの以外の重要な事項の決裁することにしました。

そうしますと、担当課長が分掌するものは担当課長が専決しますから、総括課長への協議、決裁を待つ時間がいらなくなります。

また、総括課長が判断しなければならない事務も減るため、こちらも課長協議、決裁に要する時間も減ります。

さらに大きいのは、従来、課長の補助的位置づけであった課長補佐が、自分の分掌する事務について決裁権を持ち、かつ「担当課長」という呼称のため、本人のやる気、自覚が増して、生き生きとしたことでした。

このように、従来、上司を補助する役割であった課長補佐職や次長職を見直すことによって事務処理に要する時間を減らすとともに、組織と職員を活性化させることができます。​

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